シャドーAIとは|企業にもたらすリスクと実施すべき5つの対策

「従業員が無断でAIツールを使うと、会社にどんな危険がある?」
「シャドーAIへの対策って、何をすればいい?」

ChatGPTやClaudeなどの生成AIツールが急速に普及する中、企業が正式に導入していないにもかかわらず、従業員が個人の判断で業務に利用する「シャドーAI」が増加しています。AIツールは便利で手軽な一方で、その利用は情報漏洩やコンプライアンス違反といった重大なリスクにつながるケースも少なくありません。

企業がAIを安全に活用していくためには、シャドーAIの実態とそれに伴うリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。

本記事では、シャドーAIについて以下の内容を解説します。

  • シャドーAIの概要と増加する背景
  • シャドーAIが企業にもたらすリスク
  • シャドーAIのリスクを防ぐための具体的な対策

本記事を読めば、シャドーAIの危険性を理解し、組織としてAIを安全に活用していくためのポイントがわかります。ぜひご一読ください。理解できるでしょう。AIを活用したサービスの開発や運用に携わる方は、ぜひ最後までご覧ください。

資料で詳しく解説!AI時代に欠かせないセキュリティ対策

AIを安全にビジネスで活用していくには、シャドーAIへの対策はもちろん、組織全体での包括的なセキュリティ強化が不可欠です。中でも、DX推進に伴い開発スピードが求められるWebアプリケーションでは、AI活用による新たな脆弱性リスクも顕在化しています。本資料では、AI固有のリスクから脆弱性対策まで、効率的な回避策を解説しています。ぜひご一読ください。

シャドーAIとは

シャドーAIとは、企業のIT部門や経営陣の承認を得ずに、従業員が個人の判断で業務に利用するAIツールを指します。これは、従来から問題視されてきた「シャドーIT(組織に無断で導入・利用されるIT機器やサービス)」の概念が、AI時代に拡張したものです。

具体的には、ChatGPTやClaude、Geminiといった文章生成AIや、Midjourney、Stable Diffusionのような画像生成AI、そしてNottaやMeetingCostのような文字起こしツール(音声認識AI)など、ブラウザ経由で手軽に利用できるツールが主な対象となります。

実際の業務においては、メールや文書の作成、プログラミングの支援、データの要約や分析、画像の生成、マーケティング資料の下書き作成など、多岐にわたる用途でシャドーAIが使われています。一見すると業務効率が向上する便利な手段のように思えますが、企業にとっては重大なリスクを伴う可能性があります。

シャドーAIが増加している背景

シャドーAIが増加している背景には、技術の進化と働き方の変化が深く関わっています。ChatGPTに代表される生成AIが急速に普及し、ブラウザさえあれば誰でも高性能なAIを手軽に利用できるようになったことが、もっとも大きな要因です。従業員は、文書作成やデータ分析といった日常業務が効率化されることをすぐに実感できるため、会社の正式な承認を待たずに個人の判断でツールを導入してしまいます。

一方で、多くの企業ではAIの利用に関する明確なガイドラインやルールの整備が追いついていないのが実情です。そのため、従業員の多くは、自らの行動が引き起こす情報漏洩などのセキュリティリスクを十分に認識しないまま、便利なAIツールを使い続けてしまう状況が生まれています。

こうした従業員側の利便性の追求と、企業側の管理体制の遅れとの間に生じたギャップこそが、シャドーAIの蔓延を招いているといえるでしょう。

シャドーAIが企業にもたらす5つのリスク

従業員によるシャドーAIの利用は、業務効率化というメリットの裏に、企業の存続を脅かしかねない深刻なリスクを内包しています。組織の管理外で行われるAIツールの活用は、意図せずして重大な問題を引き起こしかねません。

具体的には、主に以下の5つのリスクが挙げられます。

  1. 機密情報・個人情報の漏洩
  2. セキュリティリスクの拡大
  3. コンプライアンス違反
  4. 業務品質・ブランドへの悪影響
  5. 運用・管理リスクの深刻化

1.機密情報・個人情報の漏洩

シャドーAIのリスクのひとつが、機密情報や個人情報の漏洩です。特に、生成AIの業務利用においては注意が必要です。生成AIに業務上のデータを入力すると、その情報が生成AIのシステム上で保存・処理され、外部に流出する可能性があります。特にクラウド上で提供されるサービスでは、情報の管理主体が企業外であるため、予期せぬ形で第三者にアクセスされるリスクが伴います。

さらに、入力された情報がサービス改善や生成AIの学習データとして利用される可能性も考慮しなければなりません。もし機密情報が学習データとして取り込まれてしまうと、将来的に他の利用者が生成AIに質問した際の回答として、その情報の一部が表示されてしまう危険性があるのです。

実際に2023年には、海外の大手電機メーカーの従業員が機密情報を生成AIに入力し、情報が漏洩するという事例が発生しました。リスクを未然に防ぐには、従業員一人ひとりが情報の取り扱いに対する意識を高め、生成AIを適切に利用する必要があります。

2.セキュリティリスクの拡大

シャドーAIの利用がもたらすセキュリティリスクは、従来のシャドーITで問題視されてきた事柄が、AIツールにも当てはまる形で顕在化するものです。

IT部門の管理下にないシャドーAIの利用は、企業全体のセキュリティを脅かすリスクを引き起こします。例えば、従業員が利用しているAIツール自体に脆弱性が存在したり、クラウドで提供されるAIサービスが不正アクセスを受けていたりする場合、企業のネットワークがサイバー攻撃の標的となるおそれが出てきます。

また、シャドーAIはセキュリティ対策の網をすり抜け、セキュリティチェックやアクセス制限が適用されないまま運用されるケースが少なくありません。その結果、AIツールのアカウントが乗っ取られたり、AIの出力機能が悪用されてマルウェア感染経路となったり(プロンプトインジェクション)した場合に、企業の重要な情報が外部へ盗み出される危険性が高まります。安全性が確認されていないAIツールの使用は、それ自体が新たなリスク要因であるという認識が必要です。

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3.コンプライアンス違反

シャドーAIの利用は、意図せず法令違反を引き起こすコンプライアンス上のリスクをはらんでいます。例えば、顧客の個人情報や取引先の機密情報をAIツールに入力する行為は、一般データ保護規則(GDPR)や個人情報保護法などの法規制に抵触する可能性があります。違反が発覚した場合、企業は多額の罰金を科されるだけでなく、社会的な信用を失うことにもなりかねません。

法律だけでなく、取引先との契約違反も重大な問題です。顧客から預かった情報を許可なくAIツールに入力する行為は、秘密保持契約(NDA)の違反と見なされるケースも想定されます。

さらに、生成AIによる文章や画像が、既存の著作物を無断で利用していた場合、意図せず著作権を侵害してしまい、法的なトラブルに発展するリスクも潜んでいます。

4.業務品質・ブランドへの悪影響

シャドーAIの利用は、業務の品質やブランドイメージの低下といったリスクにもつながります。例えば生成AIには、事実と異なるもっともらしい情報を生成してしまう「ハルシネーション」と呼ばれる現象があります。従業員が生成AIの回答を十分に検証しないまま利用すると、誤ったデータに基づいた資料が作成されたり、重要な意思決定を誤ったりするおそれがあるのです。

また、従業員がそれぞれ異なる生成AIツールを無秩序に使うことで、部門ごとの成果物の品質にばらつきが生まれることも懸念されます。その結果、顧客対応やサービスの質が均一に保てなくなり、企業全体の信頼性が低下しかねません。

一度損なわれたブランドイメージを回復するには、時間とコストがかかります。シャドーAIの適切な管理は、企業の信頼性を守るうえでも極めて重要です。

5.運用・管理リスクの深刻化

シャドーAIの蔓延は、従来のシャドーITと同様に、企業の運用・管理体制にも深刻な影響を及ぼします。IT部門が従業員のAI利用状況を把握できないため、組織全体のITガバナンスが著しく低下してしまうのです。

もっとも懸念されるのは、情報漏洩などのセキュリティインシデントが発生した際の対応です。AIツールの導入状況が不明だと、原因究明や被害範囲の特定に時間がかかり、対応が後手に回ってしまうおそれがあります。特にAIの場合、その出力内容が意図しない情報を含んだり、不正な学習が行われたりするリスクがあるため、従来のITツールよりも管理の複雑性が増します。

このように利用実態がブラックボックス化している状態では、どこにリスクが潜んでいるのかを正確に評価することもできません。結果として、効果的な対策を講じることが難しくなり、企業としてのリスク管理体制そのものが機能不全に陥る危険性をはらんでいます。

シャドーAIによるリスクを防ぐための5つの対策

シャドーAIがもたらすリスクを回避し、AI技術を安全かつ有効に活用するためには、組織的なアプローチが不可欠です。従業員の利便性を損なうことなく、企業全体で統制の取れたAI利用を実現するためには、以下の5つの対策を総合的に進めることが重要となります。

  1. ガバナンス体制を整備する
  2. 利用ポリシーを策定する
  3. セキュリティに配慮したAIツールの導入を検討する
  4. 従業員教育によりリテラシー向上を図る
  5. 監視・検知体制を強化する

1.ガバナンス体制を整備する

シャドーAIによるリスクを防ぐためには、まず社内のガバナンス体制を整備することが不可欠です。これは、無秩序なAIの利用を防ぎ、組織として安全にAIを活用していくための土台となります。AIの利用に関するルールを定め、誰がどのような責任と権限を持つのかを明確化しましょう。

具体的には、AIツールの導入にあたっては、事前にセキュリティ、リスク、コンプライアンスの各観点から評価を行う利用承認プロセスの確立が求められます。十分な検証を行うことで、後に発生するリスクを大幅に軽減できます。

さらに、環境や技術の変化に応じて柔軟に対応できる体制づくりも重要です。AIガバナンス委員会などの専門組織を設け、既存ポリシーの見直しや新たなリスクの洗い出し、対策のアップデートを行うことで、ガバナンスの形骸化を防げます。

AIガバナンスの導入に役立つガイドラインや、運用のポイントについては「AIガバナンスとは|企業が知るべき基本概念と運用のポイント」で解説しているので、併せてご覧ください。

2.利用ポリシーを策定する

整備したガバナンス体制を実効性のあるものにするためには、全従業員が守るべきAI利用ポリシー(ルール)を明確に策定することが重要です。ポリシーには、顧客情報や社外秘の技術情報といった機密情報の入力を固く禁じる項目を設けましょう。さらに、IT部門がセキュリティの観点から利用を許可したAIツールをリスト化し、従業員にはリスト内のツールのみを使用させれば、組織としての統制が保たれます。

また、ポリシーにはAIツールの利用を業務利用に限定することを明記し、個人的な用途での使用を禁止することも必要です。さらに、生成AI利用に関しては、適切な指示の出し方や、生成された内容を鵜呑みにしないための確認手順といった、具体的な利用ガイドラインを設けておくと、業務品質の維持にもつながります。

こうしたルールを定めることで、従業員は「何をすべきでないか」だけでなく「どうすれば安全に使えるか」を理解し、組織全体で足並みをそろえたAIツールの活用が実現できます。

3.セキュリティに配慮したAIツールを導入する

AIツールの利用を一方的に禁止するだけでは、生産性の向上を妨げるだけでなく、かえってシャドーAIを助長しかねません。そこで重要になるのが、企業側が安全性を確認したAIツールを公式に導入し、従業員に安全な利用環境を提供する前向きな姿勢です。従業員の「AIを使って業務を効率化したい」というニーズに応えつつ、セキュリティリスクを組織の管理下に置くことが可能になります。

導入するツールを選定する際には、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)やISMSクラウドセキュリティ認証など、信頼性の高いセキュリティ要件を満たしているかどうかを確認しましょう。基準をクリアしているツールであれば、外部からの不正アクセスやデータ漏洩のリスクを低減できます。

4.従業員教育によりリテラシー向上を図る

AIツールの利用に関するルールを策定しても、それを扱う従業員一人ひとりの知識や意識が伴わなければ意味がありません。そのため、全従業員を対象としたリテラシー向上のための教育が不可欠です。

研修などを通じて、シャドーAIがもたらす情報漏洩やコンプライアンス違反といったリスクの深刻さを具体的に伝え、安全な利用方法について共通の認識を浸透させましょう。さらに、効果的な指示の出し方(プロンプトエンジニアリング)を学ぶ機会を提供し、生産性の向上とセキュリティ確保の両立を図りましょう。

策定した利用ポリシーの内容を、eラーニングや定期的な勉強会を通じて周知徹底することも重要です。AIをめぐる技術やリスクは日々変化するため、一度きりの研修で終わらせるのではなく、最新情報を継続的に共有し、組織全体のセキュリティ意識を高く維持しましょう。

5.監視・検知体制を強化する

シャドーAIによるリスクを継続的に管理するには、技術的な監視・検知体制の強化も欠かせません。ポリシーや教育だけでは把握しきれない利用実態を可視化し、不正なAIツールの使用を早期に発見・対応できる環境を整備しましょう。

具体的な方法として、企業のネットワーク通信を監視し、承認されていないAIツールへのアクセスがないかを確認することが挙げられます。さらに、許可されたツールに関しても、利用ログを分析して異常な使い方がないかをチェックしたり、生成AIへの指示(プロンプト)に機密情報が含まれていないかを監視したりしましょう。

多角的な監視体制を整えることで、リスクの兆候を迅速に捉え、問題が深刻化する前に対処することが可能になります。

まとめ|シャドーAI対策でリスクを最小化し、AIを有効活用しよう

シャドーAIとは、企業の承認を得ずに従業員が個人の判断でAIツールを業務に使用する行為を指します。利便性の高さから利用が拡大する一方で、情報漏洩やセキュリティリスク、コンプライアンス違反など、さまざまな問題を引き起こす原因にもなり得ます。

シャドーAIによるリスクを放置すると、業務の品質や企業の信頼性にも深刻な影響を及ぼします。そのため、以下のような対策を講じて、安全なAI活用環境を整えること必要です。

  • ガバナンス体制を整備する
  • 利用ポリシーを策定する
  • セキュリティに配慮したAIツールを導入する
  • 従業員教育によりリテラシー向上を図る
  • 監視・検知体制を強化する

AIツールの利用を禁止するのではなく、企業が安全な環境を整えて従業員の生産性向上を支援する前向きな姿勢が、これからの時代には求められます。

そして、AI時代におけるセキュリティ対策は、シャドーAIへの対応だけで完結するものではありません。AI技術の進化はサイバー攻撃の手法も高度化させており、Webアプリケーションを介した攻撃など、多岐にわたる脅威が存在します。そのため、自社のシステム全体、特にWebアプリケーションに脆弱性がないかを定期的に診断する必要性が高まっています。

クラウド型Webアプリケーション脆弱性診断ツール「AeyeScan」は、複雑化するセキュリティリスクの効率的な発見に役立ちます。自社のセキュリティ体制を強化し、AI時代に対応したい方は、AeyeScanの資料をダウンロードしてみてください。

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エーアイスキャン編集部

エーアイスキャン編集部

クラウド型Webアプリケーション診断ツールAeyeScanなどを提供している、株式会社エーアイセキュリティラボのオウンドメディアを運営しています。セキュリティや脆弱性に関する情報について、わかりやすさと正確さをモットーに発信していきます!

FAQ

  • シャドーAIとは何ですか?

    シャドーAIとは、企業のIT部門や経営層の許可を得ずに、従業員が業務のために独自に利用するAIツールやサービスのことです。ChatGPTやClaude、Midjourneyなど、ブラウザから簡単に利用できるツールが対象で、文書作成や画像生成、コード作成などに使われることが多くあります。

    業務効率化に役立つ一方で、情報漏洩やセキュリティリスク、法令違反につながるおそれもあり、企業の管理外でAIが使用されることによる危険性が懸念されています。

    詳しい内容は「シャドーAIとは」をご覧ください。

  • シャドーAIによるリスクを防ぐための対策は?

    シャドーAIによるリスクを防ぐには、組織全体で取り組む総合的な対策が有効です。具体的には、以下の5つの対策が挙げられます。

    • ガバナンス体制を整備する
      AI利用の承認プロセスや責任の所在を明確に定める
    • 利用ポリシーを策定する
      機密情報の入力禁止など、全従業員が守るべきルールを作成する
    • セキュリティに配慮したAIツールを導入する
      会社が安全性を確認したツールを提供し、従業員の利用ニーズに応える
    • 従業員教育によりリテラシー向上を図る
      AIのリスクや安全な使い方を研修で伝え、リテラシーを向上させる
    • 監視・検知体制を強化する
      不正利用を早期に発見するため、ネットワークなどを監視する仕組みを構築する

    上記の対策を組織全体で徹底することで、シャドーAIによるリスクを大幅に軽減できます。
    詳しい内容は「シャドーAIによるリスクを防ぐための5つの対策」をご覧ください。

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