「プライバシーマークって、どんな制度なの?」
「取得すると、会社にどんなメリットがある?」
個人情報漏えいのニュースが頻繁に報じられる昨今、企業には個人情報を適切に管理する体制が強く求められています。消費者がサービスを選ぶ際にも、企業のセキュリティ体制が厳しく評価されるようになりました。
個人情報の取り扱い体制が不十分な場合、顧客や取引先からの信頼を失い、事業の成長機会を逃してしまうおそれがあります。
本記事では、プライバシーマークについて以下の内容を解説します。
- プライバシーマークの概要
- プライバシーマークを取得するメリット
- プライバシーマークを取得する方法
- 取得に必要なセキュリティ対策
本記事を読むことで、プライバシーマークの全体像を理解し、取得に向けて具体的に何をすべきかがわかるでしょう。企業の信頼性を高め、情報セキュリティ体制の強化を目指す担当者の方は、ぜひご一読ください。

プライバシーマークとは
プライバシーマーク(Pマーク)とは、個人情報を適切に取り扱っている事業者であることを第三者機関が認めた証として付与される認定マークです。一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が運営しており、個人情報保護法をはじめとする関連法規に基づき、一定の基準を満たした企業や団体が取得できます。マークを取得すれば、個人情報を扱う際に必要な管理体制や運用ルールが整備されていることを示すことが可能です。
プライバシーマークは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS:ISO/IEC 27001 など)と比較されることもあります。ISMSが情報全般の管理体制を対象としているのに対し、プライバシーマークは「個人情報の保護」に特化している点が特徴です。個人情報保護の仕組みづくりに重点を置きたい企業にとっては、情報セキュリティ体制を整えるうえでの有力な選択肢となる認証制度といえるでしょう。
プライバシーマークを取得するメリット
プライバシーマークを取得すると、以下のようなメリットがあります。
- 信頼性を向上させられる
- ビジネスチャンスが拡大する
- 従業員のセキュリティ意識が向上する
信頼性を向上させられる
プライバシーマークを取得するメリットは、企業の信頼性を高められる点です。プライバシーマークは、第三者機関が定めた厳格な基準をクリアした証明であり、個人情報を適切に管理していることを客観的に示せます。
実際に、取引先から「プライバシーマークを取得しているか」を確認されるケースも増えています。認定を受けていることで、情報管理体制が整っていることを客観的に示せるため、新規取引の際にも安心感を与えられるでしょう。また、個人情報を預ける顧客に対しても、企業の誠実な姿勢を伝えられる点が大きなメリットです。
ビジネスチャンスが拡大する
プライバシーマークの取得は、企業間の取引において競争上の優位性をもたらし、ビジネスチャンスの拡大に直結します。多くの企業は業務委託先を選定する際に、個人情報を適切に管理できる体制が整っているかを重要な基準としています。プライバシーマークは、その信頼性を客観的に証明する手段となるため、新規顧客の開拓や既存取引の維持において有利に働くでしょう。
また、官公庁や地方自治体の入札案件に参加する際にも、プライバシーマークの取得が大きな強みとなります。入札では、参加資格条件や評価項目での加点対象としてプライバシーマークが求められるケースが少なくありません。マークがなければ参加できない案件も存在するため、取得しておくと事業機会の損失を防ぎ、これまで参入できなかった市場への扉を開く可能性を高められます。
従業員のセキュリティ意識が向上する
プライバシーマークを取得する過程は、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高める絶好の機会です。取り組みの一環として個人情報保護に関する教育を行えば、従業員は個人情報の正しい取り扱い方や情報漏えいのリスクについて具体的に学ぶことになります。結果として、組織全体で個人情報保護に関する共通認識が生まれ、社内ルールが徹底されやすくなるでしょう。
従業員の意識向上は、情報漏えいの大きな原因である人為的なミスを未然に防ぐことにつながります。日々の業務における個人情報の取り扱いも慎重になり、組織として個人情報を守る文化を醸成していけるでしょう。
プライバシーマークを取得する方法
プライバシーマークを取得するには、所定の条件を満たしたうえで、認定機関による審査を受ける必要があります。申請から認定までには一定の期間と準備が必要となるため、あらかじめ全体の流れを把握しておくことが大切です。
プライバシーマークを取得するための具体的な方法について、以下の3つの観点から解説していきます。
- 申請資格がある事業者
- 取得の流れ
- 取得にかかる時間・費用
申請資格がある事業者
プライバシーマークを申請するためには、いくつかの基本的な資格要件を満たす必要があります。まず、日本国内に活動の拠点を持つ事業者であることが大前提です。この条件は法人のみに限らず、個人事業主であっても満たせば申請することが可能です。
また重要な点として、個人情報を保護するための社内ルールである「個人情報保護マネジメントシステム(PMS)」を構築し、国の定める規格(JIS Q 15001)に沿って実際に運用していることが求められます。
なお、法令に違反する行為や、社会的に見て不適切とされる事業活動を行っている場合は、申請資格がないと判断されます。以上のような条件をすべてクリアしている事業者が、プライバシーマーク取得に向けた審査プロセスに進むことが可能です。
取得の流れ
プライバシーマークの取得は、まず社内準備から始まります。具体的には、個人情報を保護するための社内ルールである「個人情報保護マネジメントシステム(PMS)」を構築し、それを実際に運用しなくてはなりません。
PMSの運用は、計画・実行・評価・改善を繰り返す「PDCAサイクル」に沿って進めていきます。リスク分析と対策計画を立て、従業員教育やルール運用を実施し、内部監査で評価を行い、見つかった課題を改善するという一連の流れです。PDCAサイクルを最低1回以上実施し、体制が整った段階でようやく審査機関へ申請することが可能です。
申請書類を提出すると、審査機関による審査が開始されます。審査は、提出された書類が基準を満たしているかを確認する「書類審査」と、審査員が実際に事業所を訪れて運用状況を確かめる「現地審査」の2段階で構成されています。
審査を無事に通過すると付与適格の決定がなされ、事業者と審査機関との間で契約を締結する流れです。契約手続きが完了すると、Webサイトや名刺などにプライバシーマークを掲載できるようになります。
取得にかかる時間・費用
プライバシーマークの取得にかかる時間は、準備段階から含めると一般的に半年から1年程度を見ておく必要があります。この期間は、大きく「社内体制の構築期間」と「審査機関による審査期間」の2つに分けられます。特に社内体制の構築には、企業の規模や現状のセキュリティレベルによって数ヶ月を要する場合があり、計画的な進行が不可欠です。審査機関へ申請してからマークが付与されるまでの期間だけでも、4ヶ月から8ヶ月ほどかかるでしょう。
取得に必要な費用は、事業者の規模によって変動します。審査機関へ支払う費用は「申請料」「審査料」「付与登録料」で構成されており、資本金や従業員数によりますが、30~100万円ほどかかります。さらに、自社だけで準備を進めるのが難しい場合には、コンサルティング会社へ依頼するための費用が別途発生することも考慮しておきましょう。
プライバシーマーク取得に向けた代表的なセキュリティ対策
プライバシーマークの審査に合格するためには、個人情報保護に関する社内ルールを定めるだけでなく、それを実践するための具体的なセキュリティ対策を講じている必要があります。これらの対策は、単にITシステムを導入すればよいというものではなく、以下の多角的なアプローチが重要です。
- 物理的な対策
- 技術的な対策
- 人的な対策
- 組織的な対策
物理的な対策
プライバシーマーク取得のために必要な物理的な対策とは、個人情報が記録された書類やパソコン、サーバーなどを盗難や紛失といった脅威から守るための具体的な取り組みを指します。具体的には、次のような対策です。
- 部外者が安易にオフィスへ侵入できないように、ICカードや生体認証による入退室管理システムを導入する
- 個人情報が保管されているサーバー室や書類保管庫への立ち入りを特定の従業員のみに制限し、その入退室記録を管理する
- ノートパソコンをワイヤーロックで固定する
- 重要な書類を保管するキャビネットは必ず施錠する
- 業務終了時に机の上に書類を放置しない「クリアデスク」を徹底する
- 不要になった書類をシュレッダーで確実に破棄する
外部からの侵入だけでなく、内部関係者による意図しない持ち出しや紛失を防ぐ対策が不可欠です。
技術的な対策
技術的な対策とは、ITシステムやソフトウェアを活用して、個人情報をサイバー攻撃やコンピュータウイルスといった脅威から守るための具体的な取り組みを指します。どれだけルールを整備しても、システム自体に弱点があれば情報漏えいのリスクはなくなりません。
プライバシーマークの取得に役立つ主な技術的対策には、次の3つがあります。
- アクセス制御を行う
- セキュリティソフトを導入する
- 脆弱性診断を導入する
アクセス制御を行う
アクセス制御とは、個人情報が保存されたシステムやデータに対し、権限を持つ人だけがアクセスできるように制限する技術的な対策です。もっとも基本的なのはIDとパスワードによる利用者認証ですが、セキュリティをさらに強化するため、パスワードの複雑性の強制や、多要素認証(MFA)の導入などを行うことが求められます。
アクセス制御をより効果的にするためには、従業員の役職や職務に応じて、アクセスできる情報システムやデータの範囲を最小限に設定することも重要です。さらに、誰がいつどの情報にアクセスしたかという記録(アクセスログ)を保管・監視する体制も構築しなくてはなりません。記録は不正アクセスの検知や原因究明に役立つだけでなく、不正行為そのものを抑制する効果も期待できます。
セキュリティソフトを導入する
プライバシーマークの取得においては、サイバー攻撃や不正アクセスから個人情報を守るためのセキュリティソフトの導入が重要です。一般的な対策例として、ファイアウォールやWAFなどのセキュリティ製品・サービスを活用し、外部からの不審なアクセスをブロックする方法が挙げられます。
ファイアウォールは、社内ネットワークと外部ネットワークの間で通信を監視し、不審なアクセスや不正なデータの送受信をブロックします。これにより、悪意のある第三者が社内システムに侵入するのを防ぐことができます。一方で、WAFはWebサイトやWebアプリケーションを狙った攻撃を検知し、遮断する仕組みです。
セキュリティ製品・サービスを活用して対策を継続的に行うことで、システムの安全性を高め、プライバシーマークの審査にも対応できる強固な情報保護体制を維持できます。
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脆弱性診断を導入する
脆弱性診断とは、企業のWebサイトや情報システムに潜むセキュリティ上の弱点(脆弱性)を、専門的な技術を用いて探し出す検査です。ファイアウォールなどの防御策を講じることも重要ですが、それだけでは防ぎきれない攻撃も存在します。そのため、定期的に脆弱性診断を実施し、攻撃者に悪用される前に自社のシステムの弱点を特定し、修正することが不可欠です。
脆弱性診断を導入することで、自社のシステムが抱える具体的なセキュリティリスクを客観的に把握できるようになります。診断結果に基づいて、発見された脆弱性の危険度に応じた適切な対策を計画的に講じることが可能です。
プライバシーマークの審査においては、こうした能動的なセキュリティ対策は高く評価されるでしょう。定期的な診断と改善のサイクルを回すことは、個人情報を守るための継続的な努力を証明する有力な証拠となり、組織の情報セキュリティレベルを大きく向上させます。
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人的な対策
プライバシーマークを取得するためには、従業員一人ひとりが個人情報保護の重要性を理解し、正しく行動できるようにする「人的対策」が欠かせません。どれほどシステム面や設備面の対策を整えても、最終的に情報を扱うのは人です。ヒューマンエラーを防ぐためには、従業員教育と意識向上が非常に重要な取り組みといえます。
プライバシーマークの要求事項では、全ての従業員に対して個人情報保護に関する教育を継続的に実施することが求められており、一般的には、少なくとも年に1回以上の教育を行うのが標準的な運用とされています。入社時の研修や定期的な教育を通じて、個人情報保護方針や社内ルールを共有しましょう。取り組みを通じて従業員一人ひとりの責任感を醸成し、組織として情報を守る文化を構築していきましょう。
組織的な対策
組織的対策とは、個人情報を安全に管理するための社内体制やルールを整備する取り組みです。具体的には、個人情報保護の責任者を任命し、各従業員の役割と権限を明確に定めることが含まれます。
また、定めたルールが形骸化しないよう、運用状況を定期的に確認する仕組みも重要です。例えば、ルールがきちんと守られているかをチェックする「内部監査」を計画的に実施することが求められます。
万が一、情報漏えいなどの事故が発生してしまった場合に備えて、速やかに報告・連絡し、対応するための緊急時体制をあらかじめ整備しておく必要もあるでしょう。業務の一部を外部の事業者に委託する際には、その委託先が適切に個人情報を扱っているかを確認する必要もあります。
以上のような対策は、継続的に個人情報を守るための組織的な基盤を確立するために不可欠です。
まとめ|プライバシーマークを取得して顧客から信頼を獲得しよう
プライバシーマークは、企業が個人情報を適切に取り扱っていることを第三者機関が認めた証です。取得することで、顧客や取引先からの信頼を高めるだけでなく、新たなビジネスチャンスの拡大にもつながります。さらに、申請準備を通じて社内の情報管理体制が整い、従業員のセキュリティ意識も向上します。
取得を目指す際には、物理的・技術的・人的・組織的なセキュリティ対策を実施することが重要です。中でも、自社のシステムに潜むセキュリティ上の欠陥を事前に発見・修正する「脆弱性診断」は、情報漏えいを未然に防ぐための効果的な手段となります。
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