DevSecOpsとは|組織全体で取り組むべき課題や実現方法を解説

「開発スピードを落とさずにセキュリティを強化したい」
「DevSecOpsを実現するための具体的な方法が知りたい」

事業開発のスピードを維持しつつセキュリティを強化するには、開発から運用までの各工程でセキュリティを意識しながら作業を行うDevSecOpsを実現する必要があります。実現が成功すれば、高いセキュリティレベルを維持しつつ、短い期間でWebシステムやサービスをリリースすることが可能です。

DevSecOpsを実現するには、組織全体で体制の変革に取り組む必要があります。そのため開発・セキュリティ・運用にかかわる人だけでなく、経営者の方もDevSecOpsについて深く理解しなければなりません。

本記事では、以下の内容を詳しく解説します。

  • DevSecOpsの概要
  • 実現に欠かせない4つの分野
  • 実現するための具体的な方法

本記事を読むことで、DevSecOpsの課題の解決方法や、実現するための心構えが分かります。セキュリティを強化しつつ、効率的に開発できる体制を整えたい企業の方はぜひご一読ください。

DevSecOpsに取り組まれる企業さま必見!

DevSecOpsを実現するための具体的な方法が知りたい

DevSecOpsの実現に向けては、自動化ツールの導入が欠かせません。特に開発プロセスで随時行われることになる脆弱性診断の自動化は、効率化・スピード向上に直結します。CI/CDツールとも連携できる診断ツールは、こちらをご覧ください。

DevSecOpsとは

DevSecOps(デブセックオプス)とは、開発(Development)・セキュリティ(Security)・運用(Operations)の3つを掛け合わせたWebシステムの開発スタイルです。要件定義・設計・テスト・実装・運用のすべての工程で、セキュリティを意識しつつ開発スピードを短縮して作業を進めていきます。数日~数週間という短い期間でも、高いセキュリティレベルを維持したままシステム開発に取り組むことが可能です。

DevOpsとDevSecOpsの違い

DevOpsとは、開発と運用にかかわるメンバーが連携し、「計画→開発→リリース」までの作業をスピーディーに進める開発スタイルです。協力しながら開発を進めることで円滑に作業できますが、セキュリティの検証は開発の最後に専門チームが実施するため、リリース直前に不具合が多数見つかるケースも。そのため、開発の手戻りが大きく、事業開発スピードが上がらない問題が指摘されていました。

一方でDevSecOpsは、開発の各工程でセキュリティチェックを実施します。開発にかかわる各チームがセキュリティに対して責任を負い、共同で開発を進めていくため、問題が発生した際の手戻りが少なく、短期間で不具合の修正が可能です。セキュリティを高いレベルで維持しやすく、優先的に実施すべき課題に素早く対応できます。

また関連した用語に、ビジネスと連携したBizDevOpsやBizDevSecOpsもあります。開発スピードとセキュリティに加え、ビジネスの生産性を高めることも近年は重要視されています。

DevSecOpsの重要性

クラウドサービスやテレワークなどの普及で、ネットワークを介して通信する機会が増えたことに伴い、サイバー攻撃の脅威も拡大しています。サイバー攻撃による被害リスクを低減させるには、脆弱性の発生を最小限に抑えることが重要です。

DevSecOpsでは開発・セキュリティ・運用の各チームがしっかりコミュニケーションを取りながら作業を進めるため、安全性の高いWebシステムやサービスを開発できます。また開発スピードを落とさずに高品質を維持できれば、顧客満足度だけでなく、ビジネスにおける競争力も向上します。

DevSecOpsの3つのメリット

DevSecOpsを実現する主なメリットは、次の3つです。

  1. 開発にかかる時間とコストを節約できる
  2. 脆弱性が潜む期間を最小限にできる
  3. 組織全体のセキュリティが強化される

上記のメリットがあることから、DevSecOpsを導入する企業が増加しています。本章を読んでメリットの詳細を知り、ぜひ実現に向けて計画を立てましょう。

1.開発にかかる時間とコストを節約できる

DevSecOpsのメリットは、開発からリリースまでの時間を短縮でき、その結果開発コストを節約できることです。開発途中で都度セキュリティを確認するため、問題点が見つかってもすぐ修正でき、手戻りが少なくなります。

開発を一通り終えた後にセキュリティ上の問題が発見されると、修正箇所が多い場合は対応に時間がかかります。リリースまでの期間が長くなり、工数が増えることでコストも膨らむでしょう。セキュリティ評価がボトルネックとなって円滑に自社サービスが提供できないと、ビジネスの競争に勝つことも難しくなります。

DevSecOpsならば、セキュリティ評価と開発スピードのバランスを上手く取ることが可能です。過剰な対策などの無駄も省きやすく、開発コストの削減にもつなげられます。

2.脆弱性が潜む期間を最小限にできる

DevSecOpsは脆弱性の検知と修正を開発サイクルに統合しているため、脆弱性が潜む期間を最小限にできます。

サイバー攻撃は巧妙化しており被害件数も年々増加しているため、セキュリティの確保は不可欠です。もしサービスの停止や情報漏えいなどの被害に遭えば、企業イメージの低下は免れません。

開発の段階で脆弱性を発見・修正できれば、リリース後に大きな問題に発展するリスクを減らせます。また脆弱性の検知を自動化することで、人手を割くことなく高レベルのセキュリティ確保が可能です。

3.組織全体のセキュリティが強化される

開発・セキュリティ・運用の各チームが連携しながら開発を行うことで、お互いの理解が深まりセキュリティを強く意識しながら作業できます。

従来のように開発スピードが重視されると、セキュリティがおろそかになりがちです。しかしDevSecOpsによって開発工程にセキュリティを組み込むのが当たり前になれば、安全性の高いWebシステムやサービスを継続的に提供できます。

また「どうすれば安全性を高められるか」「ユーザーに満足してもらえるか」を妥協せず作業を進められるため、組織全体のセキュリティが向上し、Webシステムやサービスの品質も高められます。日々変化するビジネスの需要にも柔軟に対応しやすく、競争力も向上させられるでしょう。

DevSecOpsに欠かせない4つの分野

アメリカ国防総省が公開している「DoD Enterprise DevSecOps Reference Design」では、DevSecOpsに欠かせない分野に以下の4つを挙げています。

  • 組織
  • プロセス
  • 技術
  • ガバナンス

各分野の要点を押さえ、DevSecOpsの実現に役立てましょう。

組織

DevSecOpsを取り入れるためには、まず以下の流れに沿って組織体制を見直す必要があります。

  1. DevSecOpsが重要な理由を理解してもらうために、教育を行う
  2. 開発の各工程にかかわるチームについて、役割・責任の所在を明確にする
  3. DevSecOpsの評価を行い、改善を繰り返す

開発・セキュリティ・運用の各工程が分業されている場合、DevSecOpsを実現するために体制を大きく変える必要があります。しかし従来のやり方に慣れていると、変化に抵抗が生まれるでしょう。そのため、教育を通してDevSecOpsが重要な理由をよく理解してもらう必要があります。

またチームごとの役割を明確にして、組織全体でセキュリティに対する責任を負うことを意識するのも大切です。コミュニケーションをしっかり取って情報共有を行い、開発プロセスを繰り返してより良いやり方を模索していきましょう。

プロセス

DevSecOpsを実現させるには、開発や運用のプロセスを毎回評価し、改善していくことが欠かせません。開発途中で脆弱性が見つかった場合は、「なぜ脆弱性が発生したか」「どう対処すれば再発を防げるか」をしっかり考え、次に活かしましょう。何度も改善を重ねれば、開発スピードも品質も高レベルを目指せます。

また効率的な開発を行うために、自動化ツールの導入を検討するのもよいでしょう。自動化によってリソースに余裕ができれば、別の有意義な作業に人手を回すことができます。

技術

DevSecOpsにおける技術面では、ツールを導入し、開発から運用までのプロセスを自動化することが求められます。ニーズやトレンドは日々変化するため、ツールは最新のものを導入しましょう。

便利な技術を取り入れて作業を自動化できれば、セキュリティを強化した効果的な開発プロセスの構築が可能です。開発に多くの人材を割く必要がなくなり、ヒューマンエラーが減って開発期間も短縮されます。

ガバナンス

DevSecOpsの実現には、ガバナンスの強化が重要です。組織全体でセキュリティ方針を統一してガバナンスを強化することで、責任の明確化が図れます。統一されたセキュリティポリシーの適用や、リスクマネジメントの実施などでガバナンスを強化しましょう。

ガバナンスを強化してセキュリティに関する取り組みが組織全体に浸透すれば、安全なWebシステムやサービスを継続的に提供できるようになります。

DevSecOpsを実現するための課題

DevSecOpsを実現するためには、以下の課題の解決が不可欠です。

  • 組織の課題
  • ツールの課題

各課題で解決しなければならないポイントを解説するため、ぜひ参考にしてください。

組織の課題

DevSecOpsを実現するためには、開発にかかわる各チームがしっかり連携できる組織体制の構築が必要です。組織の文化や構造が十分にDevSecOpsに適応していない場合、効果的な取り組みが難しくなります。

しかし開発プロセスを完全に分業していると、チーム間の壁を取り払って連携するのが困難だと感じる企業も多いでしょう。現行のやり方で上手くいっている場合は、組織体制を変更すると品質や開発スピードが下がるリスクもあります。その上、既存ルールの見直しや人材確保といった課題も存在します。

DevSecOpsは短期間で実現できるものではなく、試行錯誤しながら組織を形成していかなければなりません。そのため経営者層のサポートも重要です。組織のリーダーがDevSecOpsの重要性を認識し、その実現を推進することが成功の鍵となります。

ツールの課題

高いセキュリティレベルを維持しつつ開発スピードを早めるには、自動化ツールの導入が欠かせません。適切なツールを選定するためには、企業ニーズや要件を明確に把握することが重要です。例えば、脆弱性診断ツールでいうと、適したツールを選ばないと、「過検知が多い」「未知の脆弱性に対応できない」などの問題が発生し、手間が増えてしまいます。

また、ツールの導入に伴うトレーニングや教育も重要です。従業員がツールを効果的に活用できるように、適切なトレーニングプログラムを提供し、スキルの向上を支援する必要があります。

DevSecOps実現への3つのステップ

DevSecOpsを実現する方法は、次の3つです。

  • シフトレフトの考えを取り入れる
  • セキュリティ教育によってチーム同士の協力体制を築く
  • 自動化ツールを導入する

3つのポイントをすべて満たすことで、円滑にDevSecOpsを実現できます。本章では具体的な方法を解説しているため、ぜひお役立てください。

シフトレフトの考えを取り入れる

DevSecOpsに欠かせないのが、シフトレフトの考え方です。シフトレフトとは、リリースのスケジュールを遅延させないために、セキュリティの考え方を開発の初期段階から取り入れることを指します。

従来の開発プロセスでは、セキュリティは後付けで対応されることが多かったため、脆弱性やセキュリティ上のリスクが見過ごされることがありました。しかしシフトレフトを取り入れることでリスクを早期に特定し、脅威に即時対応できるようになります。

シフトレフトを実現するためには、開発プロセスにチェックポイントを組み込み、セキュリティの検証を行う必要があります。セキュリティの専門家を開発チームに参加させ、リスク調査を行えば、迅速な脅威の発見が可能です。情報を共有して信頼関係を築いていくことで、組織の変革にもつながります。

セキュリティ教育によってチーム同士の協力体制を築く

DevSecOpsを実現するには、セキュリティの専門家ではない開発・運用チームもセキュリティへの理解を深める必要があります。チーム間のセキュリティ意識に相違があると、円滑に開発が進まなくなります。教育を通じて知識や意識を共有し、すべてのメンバーがセキュリティを考慮した行動を取れるようになることが重要です。

チーム同士の協力体制を築くためには、具体的に以下のような方法が有効です。

  • 定期的なセキュリティ教育の実施
    教育を通じてセキュリティに関する基本的な知識や最新の脅威について学ぶ。
  • チーム内での情報共有
    セキュリティに関する情報やベストプラクティスを積極的に共有し、チーム全体でセキュリティ意識を高める。
  • セキュリティに関するフィードバックの促進
    開発プロセス中にセキュリティ上の問題が発生した場合、チーム全体でその原因を分析し、改善策を共同で考える。

チーム同士が協力しながらセキュリティを優先する開発ができれば、安全性の高いWebシステムやサービスの提供が可能になります。

自動化ツールを導入する

DevSecOpsを早期に実現するために、作業を自動化できるツールを積極的に導入しましょう。組織体系が変化する過程では、慣れない作業やルールにより開発スピードが落ちる可能性があります。しかしツールで多くの作業を自動化すれば、開発スピードを維持しながらセキュリティ強化が可能です。

代表的な自動化ツールには、以下のようなものがあります。

目的 ツール
開発・リリースプロセスの自動化
  • CI/CDツール
セキュリティテストの自動化
  • SASTツール(静的解析ツール)
  • DASTツール(動的解析ツール)
  • IASTツール(インタラクティブ解析ツール)
  • SCAツール(OSS脆弱性検出ツール)
  • 脆弱性診断ツール
運用段階の監視・検知の自動化
  • SIEMツール
  • ログ監視ツール

ツールを導入しても上手く活用できなければ意味がないため、ツールを導入する目的を明確にし、企業ニーズに合うツールを選ぶことが大切です。導入することで本当に作業が効率化できるのか、しっかり吟味した上でツールを選定しましょう。

当社のクラウド型Webアプリケーション脆弱性診断ツール「AeyeScan」では、脆弱性診断の自動化を支援しています。誰でも簡単に、プロさながらの高度な脆弱性診断が実施できる環境を提供することから、DevSecOpsに取り組む多くの企業様に採用いただいています。無料トライアルを実施しているので、実際に利用してみたい方はぜひご相談ください。

▼関連記事
 脆弱性診断(セキュリティ診断)とは|必要性からやり方まで、すべて解説
 脆弱性診断ツール(サービス)|有料・無料の違いと5つの選定ポイント

セキュリティの最適な方法は日々変化する

DevSecOpsの実現に当たり、セキュリティの最適な方法は日々変化することに留意しなければなりません。サイバー攻撃が複雑化・巧妙化していることに伴い、セキュリティツールも日々進化しています。そのため最適だと思って導入したツールが、1年後にはベストプラクティスではなくなっている可能性も考えられます。

セキュリティは常に見直し、最新のベストプラクティスを取り入れることが重要です。情報をキャッチアップし、認識をアップデートしてDevSecOpsの実現に取り組みましょう。

まとめ|DevSecOpsを実現してセキュリティを強化しよう

開発スピードを落とさずにセキュリティを強化したいなら、DevSecOpsを取り入れるのが有効です。開発・セキュリティ・運用チームが共同で開発を進めていくため、高いセキュリティレベルを維持しつつ短期間で開発を進められます。開発時間やコストを節約しつつ、高品質のWebシステム・サービスの提供が可能です。

DevSecOpsを実現する方法は、次の3つです。

  • シフトレフトの考えを取り入れる
  • セキュリティ教育によってチーム同士の協力体制を築く
  • 自動化ツールを導入する

DevSecOpsの実現には組織体制を見直す必要がありますが、上記をすべて満たすことで、円滑にDevSecOpsを実現できます。各チームがしっかりコミュニケーションを取り、情報共有を行って徐々に組織を変革していきましょう。

またDevSecOpsの実現を成功させるには、経営者層のサポートも欠かせません。重要性を認識し、最新の情報をキャッチアップして自社にとってのベストプラクティスを取り入れることが重要です。

セキュリティ課題の解決に役立つコンテンツを配信!

脆弱性に関する最新情報やイベント・セミナーのご案内など、様々な情報をお届けします。ぜひご登録ください。

メルマガ登録はこちら
エーアイスキャン編集部

エーアイスキャン編集部

クラウド型Webアプリケーション診断ツールAeyeScanなどを提供している、株式会社エーアイセキュリティラボのオウンドメディアを運営しています。セキュリティや脆弱性に関する情報について、わかりやすさと正確さをモットーに発信していきます!

FAQ

  • DevSecOpsのメリットは何ですか?

    DevSecOpsを実現する主なメリットは、次の3つです。

    開発にかかる時間とコストを節約できる
    開発途中で都度セキュリティを確認するため、問題点が見つかってもすぐ修正でき、手戻りが少なくなります。過剰なセキュリティ対策などの無駄も省きやすく、開発コストの削減にもつなげられます。

    脆弱性が潜む期間を最小限にできる
    開発段階で脆弱性に対応できれば、リリース後に大きな問題に発展するリスクを減らせます。

    組織全体のセキュリティが強化される
    開発・セキュリティ・運用の各チームが連携しながら開発を行うことで、お互いの理解が深まりセキュリティを強く意識しながら作業できます。

    上記のメリットがあることから、DevSecOpsを導入する企業が増加しています。ぜひDevSecOpsの実現計画を立てましょう。

    詳しい内容は「DevSecOpsの3つのメリット」をご覧ください。

  • DevSecOpsを実現するためにはどうすればよいですか?

    DevSecOpsを実現する方法は、次の3つです。

    シフトレフトの考えを取り入れる
    シフトレフトを取り入れることで、セキュリティ上のリスクを早期に特定し、脅威に即時対応できるようになります。

    セキュリティ教育によってチーム同士の協力体制を築く
    セキュリティ教育を通じて知識や意識を共有すると、開発にかかわるメンバーがセキュリティを考慮した行動を取れるようになります。

    自動化ツールを導入する
    ツールで多くの作業を自動化することで、開発スピードを維持しながら効率的にセキュリティ強化を実現することが可能です。

    3つのポイントをすべて満たすことで、円滑にDevSecOpsを実現できます。組織体制を見直し、DevSecOps実現のために少しずつ変革を進めましょう。

    詳しい方法は「DevSecOps実現への3つのステップ」をご覧ください。

AeyeScan

AeyeScanの導入を検討してみませんか?

操作性の確認、
実際に利用してみたい方へ

「AeyeScan」の無料トライアル

トライアルにかかる費用は不要。実際の操作性はどうなの?またどのように脆弱性が発見されるのか?などの疑問は無料トライアルで解消しましょう。

無料トライアルの申し込み

サービスをより詳しく
知りたい方へ

「AeyeScan」のサービス概要資料

改めてサービスの特長や導入効果、企業の導入実績などAeyeScanについてより詳しく知りたい方はぜひサービス紹介資料をご覧ください。

サービス資料を読む

お見積もりの希望・導入を
ご検討している方へ

「AeyeScan」へのお問い合わせ

お見積りの希望・導入をご検討してくださっている方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。当日もしくは遅くとも翌営業日にはご連絡を差し上げます。

お問い合わせフォーム