「XDRって最近よく聞くけど、具体的に何のこと?」
「EDRやNDRと何が違うのか、わかりやすく知りたい」
サイバー攻撃は年々巧妙化しており、テレワークの普及など働き方の変化も相まって、従来のセキュリティ対策だけでは脅威を防ぎきれないケースが増えています。こうした状況で、新たなセキュリティソリューションとして注目されているのがXDRです。
XDRを導入することで、エンドポイント・ネットワーク・クラウドなど組織全体のセキュリティを横断的に監視し、脅威を早期に発見・対応できるようになります。
本記事では、XDRについて以下の内容を解説します。
- XDRとは何か、その基本的な仕組み
- XDRが注目される背景
- EDRやNDRとの違い
- XDRの導入メリットと注意点
本記事を読めば、XDRの全体像を体系的に理解できるでしょう。自社のセキュリティ対策を見直したいと考えている方は、ぜひご一読ください。

XDRとは?わかりやすく解説
XDR(Extended Detection and Response)とは、サイバー攻撃の脅威を検知して対処するソリューションです。PCやサーバーといった端末(エンドポイント)だけでなく、ネットワークやクラウドなど、組織のIT環境全体からログデータを自動で収集・分析します。
従来のセキュリティ対策は、それぞれの製品が個別の領域を監視するため、攻撃の全体像を把握しにくいという課題がありました。XDRは、複数の情報を一つのプラットフォームに集約し、横断的に分析することが可能です。これにより、単体の製品では見逃してしまうような巧妙な攻撃も、関連する事象を結びつけて早期に発見できるようになります。
なぜ今XDRが注目されるのか?3つの背景
近年、多くの企業でセキュリティ対策の新たな潮流としてXDRに注目が集まっています。
なぜ今XDRが必要とされるのか、その主な背景は次の3つです。
- サイバー攻撃の高度化・巧妙化
- テレワーク普及によるセキュリティ境界の変化
- 従来のセキュリティ対策の限界
サイバー攻撃の高度化・巧妙化
近年のサイバー攻撃は、年々高度化・巧妙化しています。かつてはウイルス感染や不正アクセスといった単発的な攻撃が中心でしたが、現在は複数の手法を組み合わせて企業の防御をすり抜ける多段階攻撃(マルチステージ攻撃)が増加しています。メールやネットワーク、クラウドなど複数の経路を組み合わせて侵入するため、攻撃の全体像を把握することは一層困難になりました。
こうした状況のなかで、従来の単一的なセキュリティ対策では、攻撃を防ぐのが難しくなっています。攻撃の兆候を早期に検知し、全体の動きを相関的に把握できる仕組みが求められており、その解決策としてXDRが注目されているのです。
テレワーク普及によるセキュリティ境界の変化
テレワークの普及やクラウドサービスの利用拡大に伴い、従業員がオフィス外で業務を行う機会が増加しました。その結果、社内ネットワークは安全で外部は危険と区別する従来の「境界型セキュリティ」では、脅威を防ぎきれなくなっています。社内外の境界が曖昧になったことで、あらゆる場所に攻撃のリスクが潜むようになりました。
そこで注目されているのが、「何も信頼しない」ことを前提にすべてのアクセスを検証する「ゼロトラスト」という考え方です。このゼロトラストを実現するには、PCやクラウドなど社内外に分散したIT環境を漏れなく監視しなくてはなりません。
XDRは、さまざまな場所から情報を集約して分析できるため、ゼロトラスト環境のセキュリティを支える重要なソリューションといえます。
従来のセキュリティ対策の限界
サイバー攻撃への対策には、ファイアウォールやアンチウイルスソフトといった複数の製品を導入し、何層にもわたって防御する「多層防御」が有効です。しかし、これらの製品はそれぞれが独立して機能しており、各セキュリティ領域の情報が分断される「サイロ化」という課題を抱えています。
製品がサイロ化していると、攻撃を受けた際にセキュリティ担当者はそれぞれの管理情報を個別に確認し、手作業で情報を突き合わせる必要がありました。このプロセスは非常に手間がかかる上、攻撃の全体像を把握するまでに時間がかかり、対応の遅れにつながってしまいます。
さらに、各製品から日々大量のアラートが通知されるため、担当者が本当に危険な脅威を見逃してしまう「アラート疲れ」も深刻な問題です。こうした課題を解決するために、複数の情報源を統合して脅威を横断的に検知・対応するXDRが注目されています。
XDRとEDR・NDRは何が違う?主要ツールとの比較
XDRを検討する際、しばしば比較対象となるのがEDRやNDRといったセキュリティソリューションです。これらのツールは似ていますが、それぞれ監視する領域や役割が異なり、得意とする分野に違いがあります。
ここでは、EDRやNDRがXDRと具体的に何が違うのか、比較しながら解説します。
EDRとの違い
EDR(Endpoint Detection and Response)は、PCやサーバーなどのエンドポイント上で発生する脅威を検知・分析・対応するツールです。端末内部での不審な挙動やマルウェア感染の兆候を検出し、感染拡大を防ぐことに特化しています。しかし、監視範囲はあくまでエンドポイント内に限定されるため、ネットワークやクラウドなど、他の領域で起きている事象と関連づけて脅威を分析するのは困難です。
一方でXDRは、EDRなどで監視している対象をさらに拡張したツールです。エンドポイントだけでなく、ネットワーク・クラウド・メール・サーバーなど、組織全体のセキュリティデータを統合的に分析します。異なるシステム間のイベントを関連付けることで、攻撃の全体像を可視化し、より早く正確な対応を実現できる点が大きな違いです。
つまり、EDRが「端末単位の防御」であるのに対し、XDRは「企業全体を横断した統合防御」を実現する仕組みといえます。EDRの機能を活用・連携しつつ、より包括的な検知と対応を実現するのがXDRの特徴です。
NDRとの違い
NDR(Network Detection and Response)は、ネットワーク上の通信を監視し、不審なトラフィックを検知・分析・対応するツールです。内部ネットワークやクラウド環境を流れるデータを可視化し、マルウェアの通信や不正なアクセスを早期に発見します。しかし、監視対象はあくまでネットワーク上に限定されるため、PC内部での不審なプログラムの実行など、エンドポイント上の活動までは十分に把握しきれません。
一方でXDRは、NDRが収集するネットワーク情報だけでなく、エンドポイント・クラウド・メールといった複数の領域からログデータを集約します。集まった情報を一つのプラットフォームで相関分析することにより、攻撃者が複数の経路を使って侵入した場合でも、その一連の流れを追跡して脅威の全体像を可視化することが可能です。
NDRがネットワークという特定の範囲に絞って脅威を監視するのに対し、XDRはより広い視点から統合的にセキュリティを強化する仕組みといえます。
XDRの主な機能と仕組み
XDRは巧妙化するサイバー攻撃に対抗するため、高度な機能を備えています。
主要な機能は次の3つです。
- 複数ソースからのデータ収集・統合
- AI技術による高度な相関分析と脅威検知
- インシデント対応の自動化・効率化
複数ソースからのデータ収集・統合
XDRでは、組織のIT環境全体からセキュリティ関連のログデータを収集・統合できます。エンドポイントをはじめ、ネットワーク機器・クラウドサービス・メールシステムといった、これまで個別に監視されていたさまざまなソースから情報を自動で集約するのです。
従来では、各セキュリティ製品が異なる形式でログを記録していたため、それらを横断的に分析するのは困難でした。XDRは、収集したこれらのバラバラなデータを共通のフォーマットに統一します。この機能により、異なるソースからの情報を一つのプラットフォーム上で関連づけて分析することが可能です。
AI技術による高度な相関分析と脅威検知
XDRは、収集した膨大なログデータを、AIや機械学習などの技術も活用しながら高度に分析します。この機能により、人の手では気づきにくい不審な通信や挙動の相関関係を把握し、脅威の検知精度を大幅に向上させることが可能です。
例えば、「ある従業員のPCで不審なファイルが実行され、その直後に社内ネットワーク内で不自然な通信が発生した」というように、エンドポイントとネットワークで別々に観測された事象を結びつけられます。
複数の情報を突き合わせることで、外部からの巧妙な攻撃はもちろん、従業員による意図しない情報漏洩や不正操作といった内部からの脅威の兆候も明らかにできます。
インシデント対応の自動化・効率化
XDRは脅威を検知するだけでなく、その後の対応プロセスを自動化・効率化する役割も担います。AIやルールベースの自動処理により、脅威を検知すると同時に、端末の隔離や通信遮断などの対策を自動で実行できます。これにより、担当者が状況を確認する前に、被害の拡大を防止する初動対応が可能です。
これまでセキュリティ担当者が手作業で行っていた一連の対応が自動化されることで、インシデント発生から対応完了までの時間を大幅に短縮できます。
XDR導入で得られる3つのメリット
XDRを導入すると、組織のセキュリティ体制は大きく強化されます。
XDRがもたらす主なメリットは、次の3つです。
- 組織全体のセキュリティ状況の可視化
- 脅威検知の精度向上と早期発見
- インシデント調査・対応の迅速化と運用負荷軽減
組織全体のセキュリティ状況の可視化
XDRを導入する大きなメリットの一つに、組織全体のセキュリティ状況を可視化できる点が挙げられます。
XDRでは、複数の領域からログデータを一つのプラットフォームに集約します。これにより、攻撃者がどこから侵入し、どのように内部で活動を広げたかといった一連の流れを時系列で追跡することが可能です。
個々の製品では見えなかった攻撃の全体像が明らかになることで、潜在的な脅威や自社のセキュリティにおける弱点を正確に把握し、より効果的な対策を講じられるようになるでしょう。
脅威検知の精度向上と早期発見
XDRを導入するメリットとして、脅威検知の精度向上と早期発見が挙げられます。従来の対策では、各セキュリティ製品が個別にアラートを発するため、一つひとつは重要度が低いと判断され、巧妙な攻撃の兆候が見逃されることがありました。
複数のソースから集めた情報をAIが自動で相関分析できるXDRを活用すれば、一見無関係に見える複数のアラートが、実は一連の攻撃活動の一部であることを突き止められます。
このように、断片的な情報を結びつけて攻撃の文脈を理解することで、これまで検知が難しかった未知の脅威や潜伏する攻撃を初期段階で発見できるようになるのです。結果として、インシデントが深刻化する前に迅速な対応をとることができ、被害を最小限に抑えられます。
インシデント調査・対応の迅速化と運用負荷軽減
インシデント発生時の調査と対応を迅速化し、セキュリティ担当者の運用負荷を大幅に軽減できる点も、XDRの大きなメリットです。従来はサイバー攻撃が疑われる場合、担当者は複数のセキュリティ製品のログを個別に収集し、手作業で情報を突き合わせる必要がありました。このプロセスは専門的な知識が求められる上に膨大な時間がかかり、対応の遅れが被害を拡大させる原因となっていました。
XDRは、攻撃に関連する情報を自動で集約し、影響範囲や侵入経路などを一つの管理画面で可視化します。これにより、担当者は状況を即座に把握し、迅速に調査を開始できるのです。
さらに、大量のアラートからAIが重要な脅威を絞り込んで通知するため、担当者は本当に対応すべきインシデントに集中できるようになります。調査や対応にかかる工数が削減されることで、限られた人材でも効率的なセキュリティ運用が実現可能となるでしょう。
XDR導入前に知っておきたい注意点
XDRはサイバー攻撃対策を大幅に強化する強力なソリューションですが、導入を成功させるためには、事前に理解しておくべきいくつかの注意点があります。
以下の2点を押さえておき、XDRの導入をスムーズに進めましょう。
- 導入・運用コストが発生する
- 運用には専門的な知識・スキルが必要
導入・運用コストが発生する
XDRは高度な機能を提供する一方で、導入や運用には一定のコストが発生する点に注意が必要です。システム構築に加えて、既存のセキュリティ製品との連携や運用ルールの整備、担当者の教育などにも費用や工数がかかります。そのため、導入効果を最大限に発揮するには、事前に計画と体制を整える必要があります。
また、XDRは多様なデータソースを統合的に管理する仕組みであるため、運用開始後も継続的なチューニングや監視体制の維持が不可欠です。特に、誤検知の削減や自動対応ルールの最適化には、一定の運用リソースを確保する必要があります。
しかし、初期投資や運用コストがかかる一方で、XDRの導入によってインシデント対応の効率化や被害の最小化が期待できます。将来的な運用負担の軽減や企業価値の維持を考慮すれば、十分に検討する価値があるでしょう。
運用には専門的な知識・スキルが必要
XDRは脅威の検知や分析を大幅に自動化してくれますが、その能力を最大限に引き出すには、ツールを使いこなす人材が不可欠です。XDRから発せられるアラートが本当に危険なものか、どのような対応を取るべきかを最終的に判断するためには、サイバー攻撃の手法やログ解析に関する高度な知識とスキルが求められます。
しかし、このような専門的なスキルを持つセキュリティ人材を自社だけで確保し、育成することは多くの企業にとって容易ではありません。そのため、XDRを導入する際には、自社の担当者で運用できるのか、あるいは外部委託を利用する必要があるのかを検討しましょう。
あわせて検討すべき脆弱性対策
XDRは、組織内に侵入した脅威を検知し、迅速に対応するための強力なソリューションです。しかし、セキュリティ対策は侵入後の「事後対応」だけでなく、そもそも攻撃者に侵入の隙を与えない「事前対策」も同様に重要といえます。
攻撃者は、OSやソフトウェアなどに存在するセキュリティ上の欠陥である「脆弱性」を狙って侵入を試みます。近年では、企業のWebサイトやWebアプリケーションの脆弱性を悪用したサイバー攻撃も増加しており、情報漏洩やサービス停止といった深刻な被害につながるケースは後を絶ちません。
そこでXDRとあわせて検討したいのが、こうした脆弱性を攻撃者に悪用される前に発見・修正する脆弱性対策です。特に、専門家やツールがシステムを調査して弱点を見つけ出す「脆弱性診断」は非常に有効な手段となります。
定期的に脆弱性診断を実施して発見された問題を修正することで、攻撃の入り口そのものを塞ぎ、セキュリティレベルを根本から高めることが可能です。XDRによる高度な検知・対応体制と、脆弱性診断による事前対策を組み合わせることで、より包括的で強固なセキュリティを実現できるでしょう。
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まとめ|XDRで統合的なサイバー攻撃対策を実現しよう
XDRは、PCやサーバー、ネットワーク、クラウドといった複数の領域からセキュリティ情報を集約・分析し、巧妙なサイバー攻撃を早期に検知・対応する統合ソリューションです。攻撃手法の高度化やテレワークの普及により、従来の断片的な対策では組織を守ることが難しくなった現代において、その重要性はますます高まっています。
XDRは侵入後の脅威を素早く見つけ出す「事後対応」に大きな強みを発揮します。しかし、より強固なセキュリティ体制を築くためには、そもそも攻撃者に侵入の隙を与えない「事前対策」を組み合わせるのも不可欠です。
特に有効な事前対策として、システムのセキュリティ上の欠陥を発見する「脆弱性診断」が挙げられます。定期的な診断で自社の弱点を把握し修正することで、サイバー攻撃のリスクを根本から低減させることが可能です。
高精度な自動診断を提供するAeyeScanは、Webアプリケーションの脆弱性を効率的に検出し、セキュリティリスクの低減に貢献します。統合的なセキュリティ対策を検討している方は、まずAeyeScanの資料をダウンロードしてみてはいかがでしょうか。


