「脆弱性診断を毎回外部に依頼していると、費用も時間もかかって大変」
「自分たちで診断できるようになりたいけれど、何から始めればいいのだろう?」
システム開発のスピードが早まっている今、脆弱性診断を外部の専門業者に依頼するだけでは、リリースのタイミングに間に合わないケースが増えてきました。コストを抑えつつ、迅速に対応するために、診断業務を自社で行う「内製化」を検討する企業が多くなっています。
しかし、いざ内製化を始めようと思っても、専門的な知識を持つ人材が足りなかったり、どのようにルールを決めればよいか迷ったりと、乗り越えるべき壁があるのも事実です。
本記事では、脆弱性診断の内製化について以下の内容を解説します。
- 内製化に取り組むメリットと課題
- 具体的な進め方の4ステップ
- 成功させるための重要なポイント
- 実際に内製化に成功した企業の事例
本記事を読むことで、自社の状況に合わせた内製化の進め方が明確になるでしょう。開発スピードとセキュリティの安全性を両立させたいと考えている担当者の方は、ぜひご一読ください。

脆弱性診断の内製化とは?注目される背景
脆弱性診断の内製化とは、これまで外部ベンダーに依頼して実施していた診断を、自社内で行えるように体制を整える取り組みです。開発チームが自ら診断を行うことで、サービス改善のサイクルに合わせて迅速にセキュリティチェックを行えるようになります。
注目されている背景には、サイバー攻撃の高度化があります。攻撃手法が進化し、脆弱性が悪用されるリスクが高まっていることから、早期に対策へつなげる仕組みが必要になり、内製化への関心が急速に高まっているのです。また、近年はDX推進によってシステム更新の頻度が増えており、開発スピードに合わせた柔軟な診断体制が求められるようになりました。
一方で、内製化のみで全ての脆弱性に対応することは容易ではありません。手動による高度な診断や、特定の領域に特化した知識が必要となるケースでは、専門家による外部診断が欠かせない場面も存在します。
そのため、多くの企業では、自社での診断と外部への依頼をうまく使い分ける「ハイブリッド運用」を取り入れています。外部診断を併用して内製化の不足部分を補えば、全体のセキュリティレベルを維持しやすくなります。
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脆弱性診断を内製化するメリット
脆弱性診断を外部に任せず、自社で行う「内製化」には、経営的な視点からも現場の視点からも多くのメリットがあります。外部ベンダーへの依頼にかかる手間や費用を抑えられるだけでなく、自分たちのペースで開発を進めやすくなる点が大きな魅力です。
具体的には、主に以下の3つの利点が挙げられます。
- 外部診断に依存せず、診断コストを最適化できる
- 開発サイクルに合わせて柔軟に診断できる
- 診断ノウハウを社内に蓄積できる
外部診断に依存せず、診断コストを最適化できる
脆弱性診断を外部ベンダーへ依頼する場合、診断のたびに費用が発生します。開発サイクルが短いシステムでは、更新のたびに外部へ委託する必要があり、年間コストが膨らむことも珍しくありません。特にアジャイル開発のようにリリース頻度が高い環境では、診断の回数が増えるほど経済的な負担が大きくなる傾向があります。
内製化を進めることで、こうした都度発生する費用を抑えられます。社内で基本的な診断ができる体制を整えておけば、日常的なチェックを自社内で完結させることが可能です。
もちろん、社内で診断を行うためのツール導入や人材の育成には、ある程度の初期投資が必要になります。しかし、一度体制を整えてしまえば、長い目で見てトータルコストを安く抑えられるでしょう。浮いた予算を他のセキュリティ対策や新しい開発に回せる点も、企業にとって大きなメリットといえます。
開発サイクルに合わせて柔軟に診断できる
外部委託すると、どうしても相手のスケジュールに合わせる必要があり、場合によっては数週間待たされることも珍しくありません。しかし、社内で診断できるようになれば、新しい機能をリリースする直前や、ちょっとした修正を加えたタイミングなど、自分たちの都合に合わせてすぐにチェックが可能になります。
また、内製化は開発工程にセキュリティ診断を組み込む「DevSecOps」の実現にもつながります。開発中に発生した脆弱性を早期に発見できれば、修正の手戻りを減らすことが可能です。結果として、リリースまでのスピード向上にも貢献します。セキュリティ確認を頻繁に行える体制が整い、品質を損なわずに開発の効率化を図れるのが内製化の大きな利点です。
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診断ノウハウを社内に蓄積できる
脆弱性診断を内製化すると、診断で得られた知見を自社内に蓄積できる点も大きな強みです。診断を繰り返す中で、どのような脆弱性が発生しやすいのか、原因はどこにあるのかといった傾向が明確になり、開発チームが改善に取り組みやすくなります。
蓄積されたノウハウを開発チームに共有すれば、エンジニアたちはプログラムを書く段階から気をつけるようになるはずです。セキュアコーディングへの意識が高まり、結果として組織全体のセキュリティレベルを大きく向上させることにつながります。
脆弱性診断を内製化する際の課題
脆弱性診断の内製化は、コスト削減や開発スピードの向上といった多くのメリットがある一方で、実現するのは決して簡単ではありません。いざ自社で始めようとすると、技術面や組織面でいくつかの難しい問題に直面することになるでしょう。
多くの企業が頭を抱える課題として、主に以下の2点が挙げられます。
- 専門知識・経験を持つ人材が不足している
- ルール作りとその定着が難しい
専門知識・経験を持つ人材が不足している
内製化のハードルの一つが「人材リソースの確保」です。脆弱性診断を適切に実施するためには、攻撃手法や診断ツールなど、幅広いセキュリティに関する知識と経験が求められます。しかし、専門的なスキルを持ったセキュリティ人材は、日本国内において慢性的に不足しているのが現状です。
いざ内製化を始めようとしても、即戦力となる優秀な人を採用するのは非常に難しく、社内でゼロから育てるにも長い時間がかかってしまいます。高度な技術を習得してもらうためには、実務に基づくトレーニングや継続的な学習が欠かせず、企業側の負担も小さくありません。
ルール作りとその定着が難しい
いざ内製化しようとするとき、最初にぶつかるのが「どうやって進めるか」というルール作りの壁です。誰が責任者になるのか、どのタイミングで診断するのか、もし脆弱性が見つかったら誰に報告するのかなど、具体的な手順や体制をゼロから決めるのは、想像以上にエネルギーを使います。しかし、明確な決まりがないまま見切り発車で進めてしまうと、担当者によってやり方がバラバラになり、適切な診断ができなくなってしまうでしょう。
また、ルールを作ったとしても、それを現場の人たちが実際に守ってくれるとは限りません。診断を担当するメンバーが十分な専門知識を持っていない場合、定められた手順通りに実施できず、形式だけの運用になってしまうケースがあります。
【4ステップ】脆弱性診断の内製化を進める具体的な方法
脆弱性診断の内製化を成功させるためには、正しい順序で準備を進めることが重要です。目的を曖昧にしたまま場当たり的に始めてしまうと、途中で運用が立ち行かなくなってしまうおそれがあります。
着実に内製化を実現するために、以下の4つのステップに沿って進めていくとよいでしょう。
- ステップ1:目的と診断対象の範囲を明確にする
- ステップ2:診断体制の構築と人材の確保・育成をする
- ステップ3:自社に合った診断ツールを選定する
- ステップ4:診断プロセスの標準化とルール策定を行う
ステップ1:目的と診断対象の範囲を明確にする
脆弱性診断の内製化を進める際は、最初に「なぜ内製化するのか」という目的を明確にすることが重要です。例えば、診断コストの削減を重視するのか、開発スピードの向上を優先するのかによって、必要となる体制やツールの選び方が変わります。目的が曖昧なまま進めてしまうと、実際の運用で「想定していた効果が出ない」といった状況に陥るおそれがあります。
目的を整理したら、どのシステムやWebアプリケーションを診断の対象とするのかを具体的に決めましょう。すべてを一度にカバーしようとせず、事業への影響度や攻撃されやすさなど、多角的な観点から優先順位を付けて範囲を定めるのがポイントです。対象を絞り込むことで、限られたリソースでも内製化に踏み出しやすくなります。
ステップ2:診断体制の構築と人材の確保・育成をする
脆弱性診断を内製化するためには、担当者のスキルセットを明確に定義し、どの部署が主導するのかを決めておく必要があります。セキュリティ専門の部署を新しく立ち上げる場合もあれば、システムを作っている開発チームのメンバーが診断役を兼任するケースもあるでしょう。
加えて、人材育成をどのように進めるかも大きなポイントです。実務で通用するスキルを身につけてもらうためには、座学だけではなく、実際のセキュリティツールに触れることが不可欠です。ツールを用いて脆弱性の種類や検出結果の特徴を確認してもらうことで、診断に必要な基礎知識を身につけやすくなります。
もし人材育成に時間をかけられなければ、すでに高度な知識を持つ専門家を外部から採用することも検討しましょう。
ステップ3:自社に合った診断ツールを選定する
脆弱性診断を内製化するためには、自社の開発環境に適した診断ツールを選ぶことが欠かせません。診断対象となるアプリケーションの種類や使用している開発言語、さらには開発プロセスとの相性を踏まえて選定しましょう。環境に合わないツールを選んでしまうと、十分な精度で脆弱性を検出できない可能性があります。
また、診断方式としては運用の負荷を抑えやすい「自動診断型」があり、提供形態としてはインターネット経由で手軽に利用できる「SaaS型」や、自社のサーバーにインストールして使う「オンプレミス型」などがあります。それぞれ料金体系や、脆弱性を見つける精度も異なります。安さだけで選ぶと必要なチェックができなかったり、逆に高機能すぎても使いこなせなかったりするため、コストと性能のバランスをしっかり比較検討することが大切です。
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ステップ4:診断プロセスの標準化とルール策定を行う
脆弱性診断を内製化する際には、診断をどのタイミングで実施するのか、どのような手順で進めるのかといった基本的な流れを定めておく必要があります。
また、発見された脆弱性の深刻度をどの基準で判断するかも重要な検討ポイントです。リスクレベルを統一しておくことで、開発チームが優先的に対処すべき問題を正確に把握できます。さらに、脆弱性を報告する際のフローを整備すれば、開発者へ情報がスムーズに届き、修正までの時間を短縮しやすくなります。
手順を標準化しておけば、誰が診断を行っても一定の品質を保ちやすくなり、無駄のないスムーズな運用が可能です。継続的な改善を行いやすい体制が整うため、内製化が長期的に機能しやすくなるでしょう。
脆弱性診断の内製化を成功に導く3つのポイント
内製化を軌道に乗せるためには、最初から完璧を目指そうとせず、現実的な計画を立てて進めることが大切です。いきなりすべてのシステムを自社で守ろうとすると、現場の負担が大きくなりすぎて失敗してしまうかもしれません。
スムーズに運用を開始し、継続して効果を上げていくためには、特に以下の3つのポイントを意識してみてください。
- スモールスタートで段階的に対象を広げる
- 診断ツールの特性を理解し活用する
- 外部の専門家や支援サービスをうまく活用する
スモールスタートで段階的に対象を広げる
いきなり全てのシステムを内製化しようとすると、準備や作業が追いつかず、途中で挫折してしまう可能性があります。最初から完璧を目指そうとすることで現場が混乱し、結局うまくいかなくなるケースは珍しくありません。
そのため、まずは特定のシステムや限定的な機能に絞って取り組むことが重要です。小さな範囲でテスト運用を行い、やり方に慣れてから少しずつ診断する範囲を広げていけば、無理なく体制を整えられます。
診断ツールの特性を理解し活用する
診断ツールは非常に便利ですが、万能ではなく、それぞれ得意とする攻撃手法や検出項目が異なります。ツールによっては誤検知や検知漏れが発生する可能性もあり、結果をそのまま信用して誤った判断につながるケースも少なくありません。ツールの仕様や判定ロジックを把握したうえで利用する姿勢が求められます。
また、検出された脆弱性に対して優先順位を付ける判断も重要です。重大なリスクを見極めずにすべてを同一の扱いとしてしまうと、開発チームがどこから対応すべきか分からず、修正が遅れる原因になります。ツールの特徴をよく理解した上で、上手に使いこなしましょう。
外部の専門家や支援サービスをうまく活用する
「内製化」という言葉にとらわれて、最初からすべての課題を自分たちだけで解決しようと無理をする必要はありません。専門的な知識が足りないときは、外部のプロフェッショナルを頼ることも、賢い選択肢のひとつです。
実際に、診断ツールの導入支援や人材育成のためのトレーニング、内製化体制の構築に関するコンサルティングなど、専門家による支援サービスは充実しています。こうしたプロのサポートを上手に活用すれば、よりスムーズに内製化を進めることができるでしょう。
脆弱性診断の内製化に成功した企業事例
脆弱性診断の内製化に成功した事例として、金融サービス業A社(従業員数約2,400人)の取り組みが挙げられます。もともとは外部のセキュリティベンダーに依頼していましたが、事業が拡大し、プロダクトの数も増えるにつれ、脆弱性診断の間隔が空いてしまうことが課題となっていました。
そこで同社は内製化を検討し、脆弱性診断ツール「AeyeScan」を導入。導入初年度は約60のプロダクトを対象に、順次定期脆弱性診断を実施しました。また、自動生成される画面遷移図を活用することで、開発者との連携や問い合わせ対応もスムーズになっています。
運用面では、セキュリティ部門が主導する形で、誰が実施しても同レベルで診断を行えるように社内での診断手順を標準化。グループ統一のセキュリティスタンダードを適用し、全体での底上げを図っていく中でも、AeyeScanを活用していくことを検討していらっしゃいます。
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まとめ|脆弱性診断の内製化で、開発スピードとセキュリティを両立しよう
脆弱性診断の内製化とは、これまで外部ベンダーに依頼していたセキュリティチェックを、自社のチームで実施する取り組みです。システム開発のスピードを落とさずに高い安全性を確保しやすくなることから、多くの企業で内製化が検討されています。
内製化が実現すると、診断にかかるコストを削減できたり、社内にセキュリティの知識が蓄積されたりと、さまざまなメリットが得られます。一方で、専門知識を持った人材の不足や、運用ルールを定着させる難しさといった課題も乗り越えなければなりません。
内製化する際は、以下のステップに沿って進めていきましょう。
- ステップ1:目的と診断対象の範囲を明確にする
- ステップ2:診断体制の構築と人材の確保・育成をする
- ステップ3:自社に合った診断ツールを選定する
- ステップ4:診断プロセスの標準化とルール策定を行う
特に、専門的なスキルを持つ人材が足りない現場では、誰でも扱いやすく精度の高い「診断ツール」の導入がおすすめです。
AIを活用した脆弱性診断ツール「AeyeScan」なら、高度な専門知識がなくても、簡単な操作でプロレベルの診断を実施可能です。巡回作業をAIが自動で行ってくれるため、限られた人員でもスムーズに内製化を始められます。開発スピードと強固なセキュリティを両立させたい方は、ぜひAeyeScanの資料をダウンロードして詳細を確認してみてください。



