「不正アクセスから会社を守るには、どうすればいい?」
「自社のセキュリティ対策は十分か不安だ」
サイバー攻撃の手口は年々巧妙化しており、企業規模の大小を問わず、すべての組織が不正アクセスの脅威に晒されています。ひとたび被害に遭えば、金銭的な損害だけでなく、企業の社会的信用を失うなど、事業の存続を揺るがす事態に発展しかねません。
本記事では、企業の不正アクセス対策について、以下の内容をわかりやすく解説します。
- 不正アクセスが企業に与えるリスク
- 主な攻撃手口と侵入経路
- 企業が実施すべき具体的な対策
- 不正アクセス発生時の対応フロー
本記事を読むことで、自社で取り組むべきセキュリティ対策の全体像がわかり、情報資産を守るための具体的な行動を始められるでしょう。企業のセキュリティ担当者や経営層の方は、ぜひご一読ください。

なぜ企業は不正アクセス対策が必要なのか?
不正アクセスは、企業にとって深刻な経営リスクです。ひとたび被害に遭うと、事業の根幹を揺るがすほどの甚大な損害を受ける可能性があります。
企業が不正アクセス対策を講じるべき具体的な理由は、次の3つです。
- 身代金や事業停止などによる金銭的損害が発生する
- 信用の失墜とブランドイメージの低下が起こる
- 法的責任と規制違反のリスクが生じる
身代金や事業停止などによる金銭的損害が発生する
不正アクセスは、企業に直接的な金銭的損害を与える可能性があります。特にランサムウェア攻撃は、社内のデータを暗号化して使用不能にし、復旧と引き換えに高額な身代金を要求してきます。しかし、身代金を支払ってもデータが元に戻る保証はなく、むしろさらなる攻撃の標的となるリスクを高めることにもなりかねません。
また、攻撃によって基幹システムやWebサイトが停止すれば、事業活動そのものが麻痺してしまいます。サービスを提供できなくなることで売上機会を失うだけでなく、システムの復旧費用や原因究明のための調査費用、顧客への損害賠償など、多岐にわたるコストが発生するでしょう。これらの損害は甚大な額に上ることもあり、企業の経営基盤を大きく揺るがす要因となります。
信用の失墜とブランドイメージの低下が起こる
不正アクセスが発生すると、顧客や取引先からの信頼が大きく揺らぎます。特に、顧客情報や取引データといった機密性の高い情報が漏洩した場合、「この企業は情報管理が甘い」という印象を与えてしまい、ブランドイメージの低下につながります。いったん傷ついた信用を回復するには長い時間がかかるため、その間に顧客離れが進んでしまうかもしれません。
さらに、SNSやニュースで不正アクセスの事実が拡散されると、企業の評判は一気に悪化します。情報の真偽にかかわらず、世間のイメージが固定されることで、新規顧客の獲得や採用活動にも影響を及ぼすおそれがあります。
法的責任と規制違反のリスクが生じる
不正アクセスによって顧客情報や取引データが流出した場合、企業は重大な法的責任を問われる可能性があります。例えば「個人情報保護法」では、事業者に個人データを安全に管理する義務を課しています。万が一情報漏洩が発生した際には、漏洩の内容や影響によっては、国の機関への報告や影響を受けた本人への通知が、法律で義務付けられているのです。
漏洩が発生した際に適切な報告や公表を怠ると、行政処分や罰金の対象となることがあります。さらに、被害を受けた顧客や取引先から損害賠償を求められるケースも少なくありません。
企業を狙う不正アクセスの主な手口と侵入経路
不正アクセスの手口は年々巧妙化しており、攻撃者はさまざまな方法で企業システムへの侵入を試みます。効果的な対策を講じるためには、まず以下のような敵の手口を知ることが重要です。
- 認証情報の窃取
- VPN機器やサーバーの脆弱性を悪用した侵入
- 標的型攻撃メールによるマルウェア感染
- サプライチェーンの弱点を突いた攻撃
認証情報の窃取
不正アクセスの多くは、IDやパスワードといった認証情報の窃取から始まります。攻撃者は正当なアクセス権限を持つアカウントを悪用するため、不正な活動であることが発覚しにくいのが特徴です。
認証情報を盗む具体的な方法としては、偽のWebサイトに誘導してログイン情報を入力させる「フィッシング詐欺」が有名です。また、他のサービスから漏洩したIDとパスワードの組み合わせを試す「パスワードリスト型攻撃」も頻繁に用いられます。
安易なパスワードの設定や、複数のサービスでの使い回しは、こうした攻撃のリスクを著しく高める要因となります。
VPN機器やサーバーの脆弱性を悪用した侵入
VPN機器やサーバーの脆弱性を突いた侵入は、企業を狙う不正アクセスの代表的な手口の一つです。VPNは社外から社内ネットワークへ安全に接続するための仕組みですが、脆弱性を放置すると、攻撃者に遠隔から内部ネットワークへ侵入される危険性があります。
また、サーバーやネットワーク機器のOS、ミドルウェアに存在する脆弱性も狙われやすいポイントです。攻撃者は既知の脆弱性情報を悪用し、侵入経路を確保した上でバックドアを設置してシステムを操作するケースがあります。
標的型攻撃メールによるマルウェア感染
標的型攻撃メールは、特定の企業や組織を狙って巧妙に作られた不正メールです。取引先や顧客からの連絡、あるいは社内の通知を巧妙に偽装しているため、受信者が疑いなく添付ファイルを開いたり、本文中のURLをクリックしてしまったりするケースが後を絶ちません。
もし添付ファイルを開封したりURLにアクセスしたりすると、使用しているPCがマルウェアに感染してしまいます。一台でもマルウェアに感染すると、社内ネットワークを通じて他の端末にも広がり、機密情報を外部へ送信したり、システムを遠隔操作されたりするおそれがあります。
サプライチェーンの弱点を突いた攻撃
サプライチェーン攻撃は、ターゲットを直接狙うのではなく、関連会社や業務委託先など、セキュリティ対策が手薄になりがちな組織を踏み台にして侵入する攻撃手法です。製品やサービスが顧客に届くまでの一連のつながり(サプライチェーン)の、もっとも弱い部分を狙って攻撃を仕掛けてきます。そのため、自社のセキュリティ対策が万全であっても、取引先が攻撃されることで被害が及ぶ可能性があります。
具体的に考えられるのは、取引先のシステムに侵入し、そこから得た情報やアクセス権を悪用してターゲットに侵入する手口です。また、企業で広く利用されているソフトウェアの開発元を攻撃し、正規のアップデートに見せかけてマルウェアを配布する手口も存在します。
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企業が実施すべき不正アクセス対策
巧妙化するサイバー攻撃から企業の重要な資産を守るためには、多角的な視点からの対策が不可欠です。対策は大きく「組織的・人的対策」と「技術的対策」に分けられ、この両方をバランスよく実施することで、セキュリティレベルを総合的に高められます。
組織的・人的対策
不正アクセス対策の基盤となるのが、従業員を含めた組織全体の意識改革です。いくら高度な技術を導入しても、従業員がセキュリティの重要性を理解していなければ、攻撃者に突破口を与えてしまいます。
組織としてのルール作りや従業員の意識向上のために、次の対策を実施しましょう。
- セキュリティポリシーの策定と従業員教育
- インシデント対応体制の構築
- アカウント管理とアクセス権限の最小化
- ゼロトラストの導入
セキュリティポリシーの策定と従業員教育
不正アクセス対策の土台として、まず組織全体で守るべき情報セキュリティポリシーを策定することが重要です。ポリシーには、情報資産の取り扱い方やパスワードの管理方法、ソフトウェアの利用ルールといった具体的な行動基準を定めます。全従業員が共通の指針を持つことで、組織としてのセキュリティレベルを統一し、一貫した対策を実施する基盤ができます。
しかし、ポリシーを策定しただけでは十分ではありません。その内容を全従業員が正しく理解し、日々の業務で実践できるようにするには、継続的な教育が不可欠です。最新の攻撃手口や不審なメールへの対処法などを学ぶ研修を定期的に実施し、一人ひとりのセキュリティ意識を高めることが求められます。
インシデント対応体制の構築
どれだけ対策を講じても、不正アクセスのリスクを完全にゼロにするのは困難です。そのため、万が一インシデントが発生した際に、迅速かつ適切に行動できる体制をあらかじめ構築しておくのも重要となります。具体的には、CSIRT(シーサート)のようなインシデント対応専門チームを設置し、問題発見時の報告ルートや対応手順を明確に定めておくことが求められるでしょう。
事前に体制と役割分担を整備しておけば、有事の際にも組織が混乱することなく、冷静な初動対応が可能になります。被害の拡大を最小限に食い止め、事業への影響を抑えるためには、こうした事前の備えが不可欠です。
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アカウント管理とアクセス権限の最小化
従業員が利用するアカウントを適切に管理することは、不正アクセス対策の基本です。入社や退職、部署異動が発生した際には、アカウントの作成や削除、権限の変更を速やかに行いましょう。特に、使われなくなった退職者のアカウントを放置すると、攻撃者に悪用される侵入経路となり、重大なセキュリティインシデントにつながるおそれがあります。
また、従業員に対しては、担当業務を遂行する上で必要最低限のアクセス権限のみを付与しましょう。アカウント権限を最小化しておくと、万が一アカウントが乗っ取られたとしても、被害が重要な情報やシステム全体に及ぶのを防げます。
ゼロトラストの導入
ゼロトラストとは、「社内ネットワークは安全」という従来の考え方を根本から見直し、「すべてのアクセスを信用しない」ことを前提とするセキュリティの考え方です。社内外を問わず、情報資産へのアクセス要求があるたびに、その利用者が本当に信頼できるのかを検証します。
テレワークやクラウドサービスの利用が一般化した現代では、社内と社外の境界は曖昧になり、従来の境界型防御だけでは脅威を防ぎきれなくなりました。ゼロトラストを導入することで、たとえ攻撃者が不正アクセスに成功したとしても、重要なデータやシステムへのアクセスを水際で防ぎ、被害の拡大を抑制する効果が期待できます。
技術的対策
サイバー攻撃の多くは、システムの脆弱性や設定ミスを突く形で行われます。そのため、技術的な防御策を講じることは、不正アクセスを防ぐうえで欠かせません。
不正アクセス対策として有効な技術的対策は、次の5つです。
- ログの収集・監視体制の強化
- OS・ソフトウェアの脆弱性管理とパッチ適用
- 多要素認証(MFA)の導入
- WAFやIDS/IPSの導入
- 定期的な脆弱性診断の実施
ログの収集・監視体制の強化
サーバーやネットワーク機器に残されるログは、「いつ、誰が、どのような操作をしたか」を示す重要な利用記録です。このログを常時収集し、監視する体制を整えることで、不正アクセスの兆候をいち早く察知できる可能性が高まります。
また、万が一不正アクセスが発生してしまった場合、収集したログは原因究明や被害範囲の特定に不可欠な情報源となります。ログを詳細に分析すれば、攻撃者がどのような経路で侵入し、どのような活動を行ったのかを追跡できるでしょう。
OS・ソフトウェアの脆弱性管理とパッチ適用
不正アクセスは、OSやソフトウェアに存在する脆弱性を突かれることで発生するケースが少なくありません。攻撃者はこの弱点を悪用してシステムへの不正侵入を試みるため、脆弱性を放置することは非常に危険です。
このリスクを防ぐには、OSやソフトウェアのバージョン管理を徹底し、メーカーが提供する最新のセキュリティパッチを速やかに適用することが重要です。ほかにも、WebサーバーやVPN機器、業務アプリケーションなど、外部と接続するシステムは必ずバージョンを最新に保ちましょう。
多要素認証(MFA)の導入
多要素認証(MFA)とは、ログイン時のIDとパスワードに加えて、別の認証要素を組み合わせることでセキュリティを高める仕組みです。具体的には、本人が所有するスマートフォンに送られる確認コードや、指紋・顔といった生体情報などを認証に利用します。
仮にフィッシング詐欺などでIDとパスワードが盗まれたとしても、攻撃者は追加の認証手段を持っていないため、システムへの不正アクセスを水際で防げる可能性が高まります。
WAFやIDS/IPSの導入
WAFやIDS/IPSは、不正な通信を検知・防御するための専門的なセキュリティツールです。WAFはWebアプリケーションの通信内容を監視し、脆弱性を狙った攻撃からサイトを守ります。一方、IDS/IPSはネットワーク全体を監視し、不正な侵入の兆候を検知したり、自動で遮断したりする役割を担っています。
セキュリティツールを導入することで、サイバー攻撃に対する防御力を大きく向上させることが可能です。複数の防御壁を設ける「多層防御」で、セキュリティをより強化しましょう。
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定期的な脆弱性診断の実施
脆弱性診断とは、自社のWebサイトやシステムに対し、攻撃の足がかりとなる弱点がないかを専門的に調査することです。気づきにくい設定ミスや潜在的なリスクを発見するのに役立ちます。
セキュリティ対策を施したとしても、システムに新たな脆弱性が生まれれば、そこから被害に遭う可能性があります。そのため、診断を定期的に実施し、自社のセキュリティ状態を客観的に把握し続けることが重要です。診断で見つかった問題点を着実に修正していけば、不正アクセスのリスクを低減できます。
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不正アクセスが発生したら?行うべきインシデント対応フロー
万が一不正アクセスの被害を受けた場合は、迅速かつ正確な初動対応が重要です。被害を拡大させず、原因を突き止めて再発を防ぐために、以下の手順に沿って対応しましょう。
- 被害拡大を防止して事実確認を行う
- 原因究明と影響範囲の特定を行う
- 被害状況を関係者へ報告する
- 復旧と再発防止策の策定に努める
被害拡大を防止して事実確認を行う
不正アクセスの兆候を発見した際は、被害の拡大を食い止める初動対応が重要です。侵害や感染が疑われるPCやサーバーは、速やかに社内ネットワークから物理的に切り離しましょう。この対応を怠ると、他のシステムへも被害が広がり、より深刻な事態を招きかねません。
次に行うべきは、インシデントの事実関係の正確な把握です。いつ、どのシステムで、どのような異常が発生したのか、誰が最初に発見したかといった情報を時系列で正確に記録しておきましょう。
原因究明と影響範囲の特定を行う
不正アクセスの発生を確認した後は、攻撃の原因と影響範囲を正確に特定しましょう。原因を突き止めずにシステムを復旧させると、同じ手口で再び侵入されるおそれがあるため、根本的な問題の解消が欠かせません。サーバーやネットワークのログを調査し、どの経路から侵入されたのか、どのような操作が行われたのかを詳細に分析します。
また、どのデータが流出した可能性があるのか、どの範囲のユーザーに影響が及んだのかも明確にする必要があります。個人情報や取引情報など、機密性の高いデータが関係していないか、しっかり確認しておきましょう。
被害状況を関係者へ報告する
調査によって被害の全体像が明らかになったら、警察などの関係各所へ速やかに報告することが望ましい対応です。個人データの漏洩が確認された場合には、個人情報保護法に基づき、一定の要件を満たす際には、個人情報保護委員会への報告と、被害を受けた本人への通知が法律によって義務付けられています。
法的な義務を果たすだけでなく、顧客や取引先といった関係者への説明責任を尽くすことも重要です。判明した事実を誠実に公表し、現在の対応状況や今後の対策を明確に伝える姿勢が、失われた信頼を回復するための第一歩となります。迅速で透明性のある情報開示は、企業のブランドイメージへのダメージを最小限に抑える上で不可欠な対応です。
復旧と再発防止策の策定に努める
不正アクセスの被害を受けた場合、最終的な対応としてシステムの復旧と再発防止策の策定が必要です。被害の原因を排除したうえで、停止していたシステムやサービスを安全な状態に戻しましょう。
復旧後は、インシデントから得た教訓をもとに、二度と同じ事態を招かないための再発防止策を策定します。セキュリティポリシーの見直しや従業員教育の強化、監視体制の再構築といった具体的な改善策を講じましょう。
まとめ|不正アクセス対策を実施して企業資産を守ろう
不正アクセスとは、第三者が権限のない状態でシステムやネットワークに侵入し、情報を盗み出したり改ざんしたりする行為を指します。こうした攻撃は年々巧妙化しており、一度被害が発生すると、金銭的損失や事業停止、顧客からの信頼喪失など、企業経営に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
効果的な対策には、組織的なルール作りと技術的な防御策の両輪が不可欠です。「組織的・人的対策」と「技術的対策」を組み合わせることで、多層的な防御体制を構築できます。
ただし、サイバー攻撃の手口は日々巧妙化しているため、一度対策を講じただけでは不十分です。自社のシステムに潜む弱点を洗い出し、継続的にセキュリティ体制を見直す必要があります。
そこで特に有効なのが「脆弱性診断」です。システムやWebアプリケーションに潜むセキュリティ上の欠陥を早期に発見し、修正することで攻撃を未然に防ぎます。
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